42.決闘とおっさん―1
翡翠の“血封門”に向かうため、ドラグロアを出発したグルゥとキット。
ブラックキマイラによって走る馬車に揺られ北上をする二人は、夜になりドラグロア領内の町に泊まっていた。
「そっちの様子はどうだ?」
宿の一室にて、グルゥは手のひらの上のミルププに話しかける。
恥ずかしがり屋の性格はどこへいったのやら、水色のイモムシは不遜な態度で話し始めた。
「オレ様たちもまだまだケントラムに向かって移動中だぜ。おっさん達も、もう今日は宿で休憩か? 一日中馬車に乗ってると、体が痛くなってしょうがねぇぜ」
「そうだな、今日は早く休もう」
グルゥはミルププに話しかけ、早めに寝るように促した。
ベッドの上に突っ伏しているキットも既に“おねむ”の状態であり、グルゥはキットを抱えあげると、ちゃんとベッドの上に寝かせてやった。
「さて……後は」
キットが熟睡しているのを確認すると、グルゥは窓から宿の外に目を凝らす。
黒い影がさっと動いて、街角に消えていく様子が見えた。
「あれをどうするか……だな」
重いため息をついて、グルゥは外に出かける支度を整えていった。
時計を見ると時刻は既に十一時を回っている。
いい加減、休みたい頃合いだが――降りかかる火の粉は払わねばならないと、グルゥは重い足取りで宿の外に出て行くのだった。




