EX6.ラッパーとおっさん―2
そんな大きな声出たんだ……とキットが若干引くくらいの絶叫をあげたミルププ。
グルゥは楽しそうに黒いノートのページをめくっている。
「なかなか若さが表現出来ていて良いだろ。私が好きなのは特にこの、『オレとお前以外全員死ねばそれは世界平和』ってところかな」
「あああああああああああああああああ!! やめてええええええええええええ!! 私を、ミルププを殺してえええええええええええええええええええええええ!!」
必死になってグルゥからノートを取り返そうとするミルププだったが、そこは『サタン』と『ベルゼブブ』の血統の差である。
いくら背伸びをしても、ジャンプをしても、ミルププの手はノートに届くことはない。
(うわぁ……お父様、ナチュラルに人の黒歴史を発掘して晒してる……)
しかも悪気は無くやっているのだから、いっそう性質が悪いとサリエラは戦慄した。
「でもなんか、イモムシモードのミルププっぽいな!」
「そ、そっそそそそそそそそんな感想求めてない……!! やめてぉじ様……!!」
キットの素直な感想に動揺しつつも、本を積み上げて足場になる台を作り上げたミルププはようやくグルゥからノートを取り返した。
そして自らの胸に抱え込むと、絶対渡さないぞと全員にメンチを切る。
「そ、そんな獰猛な野良犬みたいな表情をしなくても……」
ミルププの攻撃性に戸惑うサリエラだったが、
「お、こっちは十二歳の頃のノートじゃないか」
その間にグルゥが発見したのは、『ミルルンのポエミ~ノ~ト』とタイトルが付けられた白いノートである。
「えーと何々? 野に咲くマーガレットは純情の証――」
グルゥの朗読の途中だがミルププは卒倒して倒れた。
(十二歳から十四歳の間に何があったんです……?)
どうでもいいことが気になるサリエラだった。
第8章 剣とおっさん ―完―




