40.家族とおっさん―11
「すまない、ミノン」
グルゥの言葉に対し、ミノンは分かっていたとでもいうように、静かな笑みを浮かべた。
「私は、ミノンだけのパパにはなれない。私には、キットが、サリエラが、ミルププが、今も助けを呼ぶ声が聞こえるんだ」
「……残念、だなぁ。せっかくパパと、久しぶりの家族になれたのに」
ミノンの腕が再びグルゥの胸に突き刺さる。
だが今度は心を潰そうというものではなく、壊れた心を、優しく治そうとする手つきだった。
「ねぇ、ママは本当に強い人だったんだね。だって今でもママの言葉が、パパの心の支えになっている」
「……ああ、そうだ。ママはパパの誇りなんだ。彼女はいつだって強く、気高く……私達のことを見守ってくれている」
ミノンの体をそっと抱き締めるグルゥ。
ミノンはそれに抗うこともせず、グルゥの胸板にそっと頬を寄せる。
「ボクだって怖いよ……パパと離れたくないよ……っ!!」
「大丈夫だ……ミノンのことは必ず助け出す。だからもう少し、もう少しだけ待っててくれ」
「……もし、ボクのことを助けられなかったら?」
意地悪な質問に、グルゥは答えに窮した。
だがグルゥは、絶対に元の世界でミノンを助けると決めたのだ――
「大丈夫だ……世界の全てを敵に回してでも、大地を全て焦土に変えてでも、ミノンのことは助けるから」
そこまで言って、ミノンはようやく安心したのか――真っ暗な世界に緑色のヒビが入り、グルゥが望んだ理想の世界は、音を立てて終わりを告げたのだった。




