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40.家族とおっさん―10

 ミノンの手がグルゥの顔を撫でる。

 髪を、黒角を、髭を、その感触を確かめるように。


「ダメだよ、パパ……。元の世界に戻ったら、ボクたちはもう家族じゃなくなってしまう」


「そう……か? そう、なのか……」


「ねぇ、ボクを見捨てないで。確かにボクはみんなより付き合いが短いかもしれないけど、生まれた時からパパと一緒でもあったんだ。だからお願い、パパだけは、ボクの味方でいてよ」


 木で出来たムジカが、ドロドロと溶け出して消えていった。


 真っ暗な世界に二人だけ。

 ミノンの不安な気持ちが、その小さな手を通して痛いほどに伝わってくる。


「パパは、みんなとボク……どっちを選ぶっていうの?」


 ミノンの問いに、グルゥは答えを出せなかった。

 自分の選択が、どちらかを見捨てる、あるいは誰かを見捨てることになるというのなら、その答えはどう転んでも間違いだからだ。


「違うでしょう」


 内なるムジカの声が囁く。


「自分の子でも他人の子でも関係ない。あなたは困っている子なら、誰でも構わずに助けるようなお人好しだった。誰でも受け入れる大きな心を持っていた。だから私は、あなたに惹かれたのよ。誰かを選んで助けるなんて……あなたらしくないわ」


 そうだ、そうだった――グルゥは涙を拭くと、自身の胸にそっと手を当てる。


 いつだって、自分が迷って挫けそうな時、声を掛けてくれたのはムジカだった。

 『サタン』の中でも最も弱虫な自分に、誰にも負けたくないという強い心を与えてくれたのは彼女だったのだ。


「ありがとう」


 今だってそうだ。

 進むべき道を見失った自分を、彼女は今でも導こうとしてくれた。


 全てを理解したグルゥは――正面に立つミノンに向かい合う。

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