40.家族とおっさん―7
「――パパ、ねぇパパって――」
「もう起きてるぞ」
既に着替えを済ませていたグルゥは、外から聞こえてきた足音を待ち構え、部屋に入飛び込んできたミノンを抱き上げた。
「わーっ!?」
「ビックリしたか? いつもお前に起こされっぱなしだからな、たまには反撃だ」
繰り返される、いつもの日常。
朝から寝室まで起こしに来てくれたのは、最愛の息子であるミノンである。
「ねぇ、今日も朝の見回りに行くんでしょ? ママは朝ごはんを作ってるし、ボクもパパと一緒に行くんだ!」
領地の見回りと領民への挨拶は、グルゥの朝の日課だった。
もちろんだ、とグルゥは大きく頷いた。
「このまま一緒に、外まで行こうか」
「こ、このまま? さすがに、ボクも下ろして欲しいけど」
「ダーメーだ。まだまだお前が甘えんぼさんだってところ、領民のみんなにバラしちゃんだからな」
恥ずかしいよう、とミノンは顔を真っ赤にして縮こまった。
グルゥはそんなミノンを抱えながら、どたどたと大股で歩き朝の散歩へと繰り出していく。
「これで……いいのか?」
その問いは、ミノンへではなく、自分自身に向けられたものでもなく、グルゥ本人も訳が分からないままに呟いていた言葉だった。
「これで……私は、ずっとここに居て――」




