40.家族とおっさん―6
「――パパ、ねぇパパってば!」
その声にグルゥは目を覚ました。
(う……? こ、ここは?)
ぼんやりとした頭で、何が起きたが思い返そうとする。
確か先程までは、どこかで風呂に入っていたような――
「もう朝の七時だよ! 早くお散歩に行こうよ!」
そうだ――それは夕べの話だ。子供と一緒に、風呂に入っていたのだ。
朝から寝室まで起こしに来てくれたのは、最愛の息子であるミノンである。
「さ、散歩……?」
「そうだよ! 朝の見回りはパパのお仕事でしょ? ママは朝ごはんを作ってるし、ボクもパパと一緒に行くんだ!」
領地の見回りと領民への挨拶は、グルゥの朝の日課だった。
そうだ、そうだった、とグルゥは何故か忘れていた自身の日課に、慌ててベッドから起きようとする。
「うおっとっと!?」
寝巻きとして腰周りがだるだるになったパジャマを着ていたため、グルゥは自分でパジャマの裾を踏み、躓いた。
が、それはいつものことなので、すんでのところでグルゥは踏みとどまる。
「新しいパジャマを買ったら? いい加減」
「分かってないな、ミノン。この緩さが寝るのには丁度いいんだ。私はゆるパンの普及を推し進めるぞ」
「何そのこだわり……。いいから、さっさと着替えて、行こう?」
グルゥはミノンに引っ張られるようにして、朝の散歩に出たのだった。




