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40.家族とおっさん―5

 微笑んでいたはずのミノンの口元が、次第に悲しみと、怒りによって歪んでいった。

 だがノニムの存在が消えていることに動揺しているグルゥは、そんなミノンの変化にまるで気がついていない。


「ノニムは何処だ!? お前じゃない、ここにはノニムが居たはずなんだ!!」


「……じゃない、よ」


 俯くミノン。

 その表情は見えないものの、震えた声から激しい感情の動きがあることが分かる。


「そんなことを言うパパは……パパじゃないよ……っ!!」


「なに……っ!?」


 顔をあげたミノンは、ボロボロと大粒の涙を流していた。

 グルゥがハッとした瞬間――ミノンの右腕が、グルゥの胸に突き刺さる。


「ぐあっ……!?」


 ミノンの手が自身の体に埋め込めたというのに、不思議と痛みはなかった。

 だが、心臓というか心そのものを鷲掴みにされたような、そんな不安定な感覚がある。


「パパがパパじゃないのなら……ねぇ、ボクは何処から来たの? 何処で生まれたの? 答えてよ……ねぇ答えてよ、パパッ!!」


「ぐああああああああああああああああああああ!! やめろっ!! これ以上……私の思い出を壊さないでくれっ!!」


 力では圧倒的に上回っているはずなのに、ミノンの華奢な腕を引き抜くことは何故か出来なかった。

 そして、ミノンがゆっくり手に力を込めると、グルゥの中の心のようなものが潰されていくのが分かる。


「うわああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


「どうして、分かってくれないの? ボクはパパの子供だ。パパのものだよ。だから、パパはボクのものなんだ」


 心が、壊れる。

 記憶が、上書きされていく。


 バスタブの中に沈んだグルゥは、そのまま起き上がることも出来ずに力尽きた。

 その意識は――再び、闇の中へと沈み込んでいく。

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