40.家族とおっさん―2
ミノンと共に朝の見回りを終えたグルゥは、何か心に引っかかるものを感じて、ぼーっとしながら朝食を食べていた。
「あなた、指まで咥えてるわよ」
ムジカに指摘され、グルゥはサンドイッチを食べ終えた後、そのまま自分の手をかじっていたことに気がついた。
「大丈夫? 考え事でもしているの?」
「あ、いや……何でもないよ、うん」
“何か”がおかしい気がするのだが、その“何か”の正体がまったく分からない。
向かいの席では、ミノンがヘンなのー、と指を差して笑っている。
「こら! 人に対してそういうことをするのは行儀が悪いぞ! ……ほっぺにパンの欠片がついてるし」
「あなたはマヨネーズを付けっぱなしよ。本当に、親子でよく似てるわね」
ミノンの頬を拭ったグルゥの口元を、ムジカが拭うという謎の三角形が出来ていた。
そのおかしさに、グルゥはつい吹きだしてしまう。
「ふふっ。気が利く奥さんと可愛い息子に囲まれて、私は本当に幸せものだな」
「どうしたの急に。まあ、私もあなたとミノンとこの国で暮らせて、本当に幸せだと思ってるわ」
何気ない日常の一コマだが、グルゥはその幸せをじっくりと噛み締めていた。
「わー、パパとママ、ラブラブ!」
「こ、こらミノン! 茶化すんじゃない!」
そしてこの幸せを、何としてでも守り抜いていかねばならないと、グルゥは決意を新たにする。
だが――
「うっ……!?」
頭痛と共にフラッシュバックする“何か”。
むせ返るような血の臭いと絶望と――か細い娘の後ろ姿――




