40.家族とおっさん―1
「――パパ、ねぇパパってば!」
その声にグルゥは目を覚ました。
(う……? こ、ここは?)
ぼんやりとした頭で、何が起きたが思い返そうとする。
確か先程までは、どこかの城に居たような――
「もう朝の七時だよ! 早くお散歩に行こうよ!」
そうだ――ここは城だ。自分の城なのだ。
朝から寝室まで起こしに来てくれたのは、最愛の息子であるミノンである。
「さ、散歩……?」
「そうだよ! 朝の見回りはパパのお仕事でしょ? ママは朝ごはんを作ってるし、ボクもパパと一緒に行くんだ!」
領地の見回りと領民への挨拶は、グルゥの朝の日課だった。
そうだ、そうだった、とグルゥは何故か忘れていた自身の日課に、慌ててベッドから起きようとする。
「うおっとっと!?」
寝巻きとして腰周りがだるだるになったパジャマを着ていたため、グルゥは自分でパジャマの裾を踏み床に転がった。
どだーんと、大きな体が床の上に転がる。
「あはは。パパのドジー」
「……笑うな、ったく」
いつものパジャマのはずなのに、何故かこのパジャマに袖を通したのも久々の気がした。
グルゥはミノンに引っ張られるようにして、朝の散歩に出たのだった。




