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4.イモムシとおっさん―10

「ったく、俺様の存在を忘れて水の中に飛び込みやがって!! 」


 クレームの声をあげる“そいつ”の姿を、キットは興味津々の目で見ていた。


「すまん、本当にすまんっ! 慌ててたから、ついっ」


「危うく俺様までドザエモンになるところだったぜ!! いいか、次にこんなことやったら、マジでぶっ殺すからな!! 二度目はねーぞ、覚悟しとけッ!!」


 グルゥの大きな手のひらの上で、そう言って怒りまくる一匹の“イモムシ”。

 紫色のそいつを見つめるキットは、いつの間にか口の端から涎を垂らしていた。


「なー、親父ぃ……」


「な、なんだよキット」


「コイツ、旨そうだな!」


 言うと思った、とグルゥは頭を抱える。

 森の中で盗賊の真似事をし、時にはひもじい思いをしてきたキットにとって、丸々太ったイモムシは“食料”にしか見えなかったのだ。


「だろう? 何せ俺様は魔界のミルワーム、食料品として大量生産されたイモムシだからな!」


(あ、そこは否定しないのか……)


「なーんだ、じゃあ丸焼きにして魚と一緒に食っていいか? いただきまーす!」


「って、いいわけあるかーーーーーいっ!!」


 ただのノリツッコミだった。


「いいか、よく聞けこのチビスケ!! 俺様の名前は“ミルププ”だ!! 単身人間界に乗り込んだこのおっさんをサポートするため付いてきた、天才イモムシなのさっ!! 普段はこのおっさんの服の中に隠れてるから、よろしくな!!」


「ミ、ミルププ!? すげー、なんかよく分かんないけどスゲー!!」


 そう、彼(彼女?)の名前はミルププ。

 『アガスフィア』に来る際に、豊富な知識を借りるために連れてきた、グルゥの使い魔だ。


 『アガスフィア』に関する知識は凄いが、乱暴な口調が玉に瑕という、ちょっと変わったイモムシである。

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