39.続・剣とおっさん―7
「ああっ!」
悲鳴をあげたミノンがうつ伏せに倒れる。
気を失ったのか、そのままミノンは動かなくなった。
「ミノンっ!!」
グルゥは慌てて駆け寄ると、ミノンの上半身を起こした。
ミノンは眠ったように目を閉じていて、呼吸はしているようである。
「大丈夫だって、オレも手加減してやったからさ。ちょっとビリッとくるだけだ」
「……本当にそうなら、いいのだが」
攻撃を受けただけでなく、散々ウルヴァーサに酷使されていたミノンだ。
三人よりも幼いミノンが心身に受けたダメージを考えると、グルゥが気が気でなかった。
「さぁ、ミノンは取り返しました。次はあなたの番ですよ」
サリエラは未だに玉座でふんぞり返っているウルヴァーサ目掛けて指を差すと、キツイ口調で言い放った。
だが、ウルヴァーサはそれを鼻で笑うだけだ。
「取り返した? 果たして本当にそうなのか、自分の身で確かめてみるんだな」
「……どういう、意味ですか」
サリエラの問いには答えず、ウルヴァーサは大きく息を吸い込んだ。
そして、膨らんだ腹から一気に息を吐き出した瞬間――
「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
空気を震わす大音量で、ウルヴァーサは雄叫びをあげた。
「ッ!?」
その咆哮は以前、グルゥがゴブリンドラグーンと対峙した時に聞いたことがあった音だった。
だがウルヴァーサの咆哮はその何倍も音が低く、まるで地の底が揺れるようである。
「……あ、あ……!!」
そして、その音に反応するように、気を失っていたはずのミノンがゆっくりと目を開けた。




