39.続・剣とおっさん―1
ドラグロアへ急いで戻ったグルゥ達を待ち受けていたもの。
それは予想だにしなかった光景だった。
「こ、これは……!!」
水堀から続く城下町への入り口を守っていたはずの門番達は、透明な緑色の水晶の中に閉じ込められていた。
城下町に入っても、同じように水晶の中で眠る人々が目に映る。
彼らは等しく安らかな表情で、まるで胎内で眠る赤子のような、何の恐れも持たない寝顔だった。
「これって、ミノンの仕業だよね、親父」
「他にこんな芸当が出来るものが居たら、見てみたいぞ」
キットの問いかけに、皮肉っぽく返すグルゥ。
それだけ、内心は焦っていたのだ。
ミノンの力が、ウルヴァーサに悪用されているという事実に。
「でも、妙ですね。どうしてウルヴァーサは、母国であるドラグロアを襲うような真似をしているのでしょう?」
「さあな。イルスウォードとかいう組織は、ドラグロアと敵対しているのかもしれん。もっともそんなこと、本人に聞いてみないと分からないだろうがな」
サリエラに対してそう答えたグルゥは、全ての元凶と思われる場所へと急ぐ。
高台の上に建てられたドラグロア城。
その上空には、まるで嵐の前触れのように、色濃い緑の光が禍々しく渦巻いていた。




