38.剣とおっさん―9
一方的に心配するグルゥを、ツァイセは冷ややかな目で見つめていた。
「そもそも、私に構っている暇はあるのかな」
「なに……?」
「ウルヴァーサ様は“災厄の子”を連れてドラグロアへと向かった。これがどういうことか分かるか?」
そう問いかけられても、グルゥにはさっぱりその重要性が分からない。
「『ベリアル』の王は、ミノンを使って何かしようとしているのか」
「そんな簡単な話であれば……ウルヴァーサ様が、現世に復活することもなかっただろうな」
「復活……?」
「ネクロマンス……闇の魔法の力だけど、そぅとぅな術者でないと、あんな綺麗な状態での復活は出来ない……」
ミルププはそう口を挟んで、珍しく真剣な表情をして黙り込んだ。
その、一瞬の後である。
「なっ……!?」
突如として明るく輝く東の空。
それも太陽の光などではない、緑色の光だ。
「親父、この光って!?」
「あ、ああ。間違いない……ミノンの力だ!」
ドラグロアに降り注ぐ緑色の光。
「ついに始まる……これが“イルスウォード”の戦の狼煙だ……!!」
ツァイセはその輝きを見届けると、ガクリとうな垂れ、そのまま気を失ってしまうのだった。




