38.剣とおっさん―8
「大丈夫か? おい、起きろ」
グルゥは腕の中のツァイセに声を掛けたが、その返事はなく、うぅと唸るだけである。
こうなったらと、グルゥはツァイセの体を地面に置き、その胸に手を伸ばし心臓マッサージをしようとした。
「ま、待てよ親父っ!」
「そういうことなら、私が手伝いますっ」
が、何故かキットとサリエラにそれを制されて、グルゥは首を傾げた。
そうしている間に、ツァイセはゴフッと血の塊を吐いて、意識を取り戻したようである。
「くッ……! き、貴様、私の体をどうするつもりだ……!」
「どうもこうもない。ただ、死んでないか確かめようとしただけだ」
グルゥの手は二つの膨らみに触れる直前にまで伸びている。
妙な勘違いをしたツァイセは、ギロッとグルゥを睨みつけて言った。
「やめろ……! 貴様に穢されるというのなら、殺された方がマシだ……!」
「は、はぁ!? 何を言っている!? 私は純粋に、お前の怪我を心配していたんだ! 何しろ、女に手をあげたのだ。子が産めなくなるような怪我を負ってないか、それくらいは確認させてもらう」
慌てたグルゥは、素直な気持ちで弁明する。
グルゥとしては、そのために腹部を避け、また顔に傷を付けては悪いと思い、胸元を狙って拳を繰り出したのだ。
が、当然ツァイセはその言葉を悪い方向へ解釈する。
「この鬼畜め……! くっ、殺せっ! いっそ私を殺してくれ!!」
「なんでそうなる!?」
まったく噛み合わない二人の会話に、キットとサリエラは途中から呆れ果てていた。
「しょくしゅ……召喚、しょぅか……?」
ミルププだけは唯一、そっちの方向にノリノリであったが。




