38.剣とおっさん―7
『憤怒』の力に頼ったわけではない。
『サタン』の血統の男が本気の力で相手を殴れば、この程度の破壊力は造作もなく出せるのだ。
「っつつ……それにしても、だいぶ引っ張りすぎたな……」
こうなることが分かっていたので、グルゥはなるべくツァイセに拳を振るいたくなかった。
ガレキの中のツァイセは、血の泡を吹いて痙攣している。
「だ、大丈夫ですかお父様っ!」
「こっちも何とかなったぜぃ!」
何人ものゾンビ兵に襲われて窮地に陥っていた三人も、どうにかピンチを切り抜けたらしい。
「お前達、無事だったのか!」
「……ミルププの魔法は……即効性はなぃけど……時間をかければ効果ばつぐん……」
「ミルププが例の触手を召喚して、コイツらを足止めしてくれたんだ」
「……ミルププは、ぁくまで足止めだけ……ぁとはみんなが、がんばってくれた……」
ゾンビ兵らはビリビリと痺れたり凍っていたり、三人が力を合わせた結果がこの勝利なのだろう。
グルゥはホッと胸を撫で下ろすのと同時に、三人がここまで健闘したことが誇らしくなるのだった。
「あとは……だな」
グルゥは気を失っているツァイセに近付くと、ガレキの中からその体をすくい上げた。




