38.剣とおっさん―3
だが、攻め込もうとするグルゥに対し、ツァイセは一定の距離を保ったまま剣のリーチを生かした攻撃を仕掛け続ける。
タイミングをはぐらかされ、浅い傷を何度も受けるグルゥ。
一つ一つのダメージは小さいものの、それは徐々に蓄積し、グルゥの動きを鈍らせていった。
「ぐ……」
「おいおい、どうした? どの程度なのか貴様の実力はッ!! もっと、私を楽しませてみろ!!」
ツァイセは大きく踏み込むと、その剣先でグルゥの胸板を斬りつけた。
激しい出血と共に、うっと呻いたグルゥは膝をつく。
「……興醒めもいいところだな。死にたくなければ、本気でかかってきたらどうだ?」
「ほ、本気、だと……?」
「貴様が手を抜いているのは、十分に伝わってきている」
(別に手加減をしているわけではないのだが……)
グルゥはそう思ったが、それを口に出すと返ってツァイセを刺激してしまいそうなので、止めておいた。
「使ってみたらどうだ……? “黒き炎”の力とやらを」
ツァイセはそう言うと、グルゥの眼前に剣を突きつけた。
血に濡れた先端が鋭く光っている。
その光を眩しそうに目を細めて見ながら、グルゥはツァイセに答えた。
「お前らは、勘違いしているようだが……“黒き炎”の力は、私の力ではない」
「……なに?」




