38.剣とおっさん―2
三人は必死に抵抗を続けるが、地の底より現れた『ベリアル』はどれもなかなかの使い手で、このままではジリ貧になることは目に見えていた。
「コイツらはかつて俺と共に『アガスフィア』で戦い抜いた精鋭だからな。いくら蘇ったばかりとはいえ、ちょっとやそっとじゃ、やられたりはしないぜ?」
そう言ったウルヴァーサは、ミノンを抱えて空へと飛んでいった。
「逃げる気かっ!?」
「逃げる? ……おいおい、違うだろ。ここからが“始まり”なんだよ。元々、当初の計画に割り込んできたのはあんたらの方なんだぜ?」
追いすがるグルゥの前に、剣を構えたツァイセが立ちはだかる。
「じゃあツァイセ。ここは任せてもいいかな?」
「御意。ウルヴァーサ様は、早く現地へと向かってください」
「了解。何人かは連れて行くぜ」
空を飛び、『ベリアル』を十数人連れて去っていくウルヴァーサ。
「待て!! 何処に行くつもりだ!!」
グルゥの問いに、ウルヴァーサは何も答えなかったが――彼らが向かった方角は、ドラグロアがある方向である。
「貴様の相手は、この私だッ!!」
ウルヴァーサに気を取られているグルゥに、ツァイセの剣が襲い掛かった。
鋭く研ぎ澄まされた剣技はグルゥの腕を浅く斬り裂いて、少量の血が零れ落ちる。
「邪魔を……するなァ!!」
ミノンを連れて行かれたことに激昂したグルゥは、すぐさまツァイセに対し反撃を試みた。




