37.竜騎士とおっさん―9
「逆に問おう」
グルゥは苛立ちをぐっと飲み込むと、冷静な口調で問いかけた。
「“あるお方”とは誰なんだ」
「答えられん」
「ドラグロアの王か」
「答えられん」
「災厄とは何だ」
「答えられん」
「ミノンをこれからどうするつもりだ」
「答えられん」
痺れを切らしたグルゥはウルヴァーサに掴みかかる。
しかし再びツァイセが間に入ると、爬虫類のような目をしてグルゥを威嚇した。
「……話にならんな。結局は実力行使というわけか」
「じゃあ、あんたが俺達に協力したくなるよう、一つだけ良いことを教えておいてやるぜ」
ウルヴァーサはそう言うと、フードの下のミノンの頭をポンポンと叩いた。
「この子は“災厄の子”だ。一緒に連れて行けば、あんたは必ず後悔する」
「だったら……それが真実かどうか、確かめさせてもらおうじゃないか!!」
これ以上の問答は時間の無駄だと、グルゥがツァイセを押しのけようとした――その瞬間である。
「交渉は決裂、ってわけだな」
そのウルヴァーサの言葉を合図に、周囲の墓の土が盛り上がり、無数の青白い手が地面から生えてきた。
「“災厄の子”の身柄は、俺達“イルスウォード”が預からせてもらう」




