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4.イモムシとおっさん―8

 その瞬間、川の水はまるで爆発したかのように霧散し、石が転がる川底が露わになる。


「んーっ!?」


 キットも水や川魚と共に空中に打ち上げられ、乾いた地面に尻餅をついた。

 ワンテンポ遅れて、打ち上げられた水が雨となり、ザーザーと二人に降り注ぐ。


「んんーっ! んーんっんんんん、んんんっ!!」


 キットは両手と口に魚を咥えており、何を話しているのかさっぱり分からない状態だった。

 分からないのだが、たぶん最後の単語は親父なんだなと、分かってしまう自分が悔しく感じるグルゥ。


 のそのそと近付いてその口から魚を外してやると、キットは改めて、目を輝かせながら言った。


「すげーっ! どーやったんだよ、親父っ!! こんなこと出来るなら、オレがちまちま魚を獲るよりよっぽど効率が良いじゃんかよっ!」


 つまりキットは、川魚を獲るために水の中に潜っていて、それを勝手に溺れたと勘違いしたグルゥが、逆に溺れてしまったのである。


「心配かけさせるな、この――」


 思わず声を荒げてしまいそうになるグルゥだが、その言葉を途中でグッと飲み込んだ。


 悪いのは、キットから目を離した自分の方だ。

 怒られるべきは自分の方なのだと、父親としての責務を果たせなかった自身を強く反省した。


「でも、オレだってすげーだろ? 今晩は焼き魚パーティーだぜ! 腹が膨れるまで食おうな!」


「……ああ、そうだな。ありがとう」


 キットは自分のことを思って、両手と口を使い、目一杯の魚を捕まえてくれたのだ。

 そう思うと、グルゥはきゅっと胸が痛むのを感じ、キットの体を強く抱き締めた。

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