表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
369/984

37.竜騎士とおっさん―5

「私はツァイセという。貴様は?」


 ウルヴァーサの慰霊碑は、ドラグロアの都から少し離れた、小高い丘の上にあるそうだった。

 そこには『アガスフィア』で命を落とした多くの戦士の墓があり、その内の一つが、ウルヴァーサの慰霊碑なのだという。


「グルゥ、だ。……ドラグロアには、君のような女性の騎士もいるのか?」


「女性蔑視か? フン、これだから野蛮な男は」


 取り付く島のないツァイセの言い方に、グルゥはうぐぐと悔しい思いをした。


「それに何だ、貴様は? そんなに幼い少女をつれて、妙な趣味でもあるんじゃないか」


「親父のことを悪く言うんじゃねーよ! 親父は立派な男だぜ、たぶん、そのウルヴァーサってヤツよりもな!」


 怒って言い返すキットを、ツァイセはフンと鼻で笑った。


「こんな冴えない男がか? ウルヴァーサ様は単騎で百人以上の兵士を討ち取ったという。それほどの武勲が、この男に立てられるとは思えないがな」


「な、なんだと……!? 親父が本気になればな、町の一つや二つくらい――」


「こ、こらキット。あまり初対面の人に汚い言葉を使うのはやめなさい」


 余計なことまで言いそうになったので、グルゥはキットの口を慌てて塞ぐ。

 ツァイセは何をやってるんだか、と呆れたようにグルゥを見ていた。


「――そら、着いたぞ。その目で、よくよく真実を確かめてみるんだな」


 それから、ツァイセとの間に会話のような会話はなく、グルゥ達は目的としていたウルヴァーサの慰霊碑の前まで着いてしまった。

 大きく立てられた墓碑には、確かにウルヴァーサと読める文字が書かれている。


「な? 言っただろう?」


「う、うむむ……っ!」


 全てはツァイセの言う通りだったのだろうか?

 手がかりを失い、またミノンの捜索が振り出しに戻ったかと思われた、その時だ。


「ようこそ、俺んちへ。ツァイセも、一芝居打ってご苦労だったな」


 その男の声は、墓碑の裏側から聞こえてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ