37.竜騎士とおっさん―2
ハッとグルゥは目を覚ます。
全身から汗が噴き出して、体中の血管が『憤怒』に満ち脈打っていた。
「い、今の夢は……」
“ドラグロア”へ向かう馬車の中。
夜の旅路を、椅子に腰掛けた不自由な体勢で寝て過ごしていたグルゥは、一人不吉な夢にうなされて起きたのだった。
夢の中では、ミノンがウルヴァーサにより折檻を受けていた。
妙にリアリティのある夢で、その不快感に、グルゥの『憤怒』の力が覚醒しかけたのだ。
「夢……本当に、夢だったのか……?」
自問自答するグルゥだが、その答えは直感的に分かっていた。
今のはミノンの助けを求める声なのだ。
自分の身に迫っている危険を、ミノンが必死になって伝えようとした結果なのだと、グルゥには何故かそう理解出来ていた。
「くそ……!!」
握り締めた拳を振るう当てもなく、グルゥはただギリギリと唇を噛み締める。
事態は、想像しているよりもっと悪い方向へ動いているようだった。
早くミノンを助けなければ、ウルヴァーサにどんな目に遭わされるか。
「許さんぞ……っ!!」
一人怒り狂うグルゥを、寝付けずにいたサリエラは薄目を開けて見ていた。




