EX5.裏・ゲームとおっさん―3
サリエラが一人、ケントラムの町を駆けていた時だった。
「っていうか、単独行動はダメだって言ったのに、お父様が一番単独行動をしてるじゃないですか……っ」
そんな愚痴を呟きながら、屋台が立ち並ぶ通りを駆けていく。
そして角を曲がろうとした瞬間、
「お待ちくださいっ!」
突然、通りがかりの男に腕を掴まれ、サリエラは勢い余って尻餅をついた。
「ったたた……!? い、いきなり何ですかっ!?」
失礼な行いにムッとしたサリエラは、男をキッと睨み付けた。
ケントラムの治安が悪いことは、グルゥから聞いていた通りである。
舐められてはいけないと、自衛の意味も含めての行動だったが。
「サリーメイア姫……ですよね? どうして、こんなところに」
男は一見優男風の顔立ちで、肩まである水色の髪を、一本にまとめて縛っていた。
何か幻でも見ているのではないかと、男は鼻の頭の上の小さな眼鏡を、クイっと持ち上げて掛け直す。
「あ、あなた、は……『五彩の騎士』の――」
その男の顔には、サリエラも見覚えがあるようだった。
「少し……話を聞かせて頂いてもいいですか? 人通りの少ない方へ」
穏やかだが、有無を言わせない口調だった。
顔面蒼白のサリエラは、言われるがまま裏道へと連れて行かれる。
そして、それからの出来事は――サリエラの心に、深い影を落とすことになるのだった。
第7章 ゲームとおっさん ―完―




