EX5.裏・ゲームとおっさん―2
「は、は、はう……はう……」
変貌は途中で止まり、ビルブーは目をぱちくりさせながら、尻を突き上げた姿勢でその場に崩れ落ちた。
「お、女の子に……女の子になってまうで……ほんま……」
意味不明なことを口走っていたが、それだけ肉体的にも精神的にもダメージが大きかったのだろう。
「うふふ……ちょうどいいところに、良いクランケが見つかって良かったぁ」
三つ編みのその少女は、突き刺した注射器の押子を引くと、シリンジの中が緑色の液体で満たされるのを恍惚とした表情で見ていた。
「にぃにってば、自分のことを放っておいて、みんなにフォルを分けちゃうんだもん……。私が頑張ってにぃにの分まで、フォルを集めて来なくっちゃねー」
ビルブーは見る見るうちに痩せ衰え、あれだけパンパンに肉が詰まっていた体が、いつしか骨と皮だけの骸骨のような姿になっていた。
あ、あ、あ、とビルブーはもはや、まともに声をあげることも出来ない。
抽出できるだけフォルを抽出した少女は、満足げにビルブーの尻から注射器を引き抜いた。
「『幸福の薬園』……きっとこのチートスキルが私に宿ったのは、にぃにを助けるためなんだから……っ!」
少女の手から注射器がフッと消え失せると、後にはフォルの詰まったシリンジだけが残っていた。
少女は鼻歌混じりに、スキップをしながらその場を後にする。
「いつか、あの子達のフォルも頂きたいなぁ……あんなに元気そうな子達なら、どれだけの量のフォルが取れるんだろう?」
その目は夢見る少女のようにキラキラと輝いていたが、その輝きの中には、少なからず狂気も見え隠れしていた。




