36.電子演算VS魔式演算 それとおっさん―7
その夜。
精神崩壊したユズを、町の自警団に宿屋爆破事件の犯人として突き出したグルゥだが、結局、宿を変えることを余儀なくされ、狭い二人部屋のソファーで横になっていた。
窓から差し込む月の青い光を眺めながら、グルゥはなかなか寝付くことが出来なかった。
それは、昼間に見たミルププの姿が、あまりに今まで見てきたミルププと違うサディスティックなものだったから。
やはり、『ベルゼブブ』の血統は、『サタン』の血統とはまったく違う思考回路で生きているのだろうか?
そんなことが気になって、仕方なかった。
「お父様……もう、眠ってしまいました?」
すると、ベッドの方からサリエラの声がした。
焦ってタオルケットを頭から被って様子を見るが、どうやらサリエラは、発情モードではなく平常時らしい。
「どうした?」
それを確認したグルゥは急に強気になり、タオルケットを開いてサリエラを迎えるような声を出した。
すると、サリエラはすかさずその間に入り込むように駆け込んでくる。
「良かった……ちゃんと生きてた、お父様っ」
胸に飛び込んできたサリエラの、まだ湿った髪の感触と石鹸の香りが、彼女の違った魅力を引き出しているようだった。
グルゥは他の二人に気付かれないように、タオウケットの下でぎゅっとサリエラを抱き締めてやる。
「昼間のことで、心配になったのか?」
「はい。……私、とても怖い夢を見たんです。お父様が殺されて、私も首を斬り落とされる夢」
それは夢というか……ある意味で実際にあったことなのだが、サリエラを怖がらせたくないと、グルゥは黙っておくことにした。




