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36.電子演算VS魔式演算 それとおっさん―6

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 白目を剥きガクガクと痙攣するユズは、断末魔のような絶叫をあげて、以後、二度と自ら物を言うことはなかった。


 ただ口の端からだらしなく涎を垂らし、あーうーと意味不明な呻き声をあげ続けるだけ。

 もはや人の形をしているだけの、生きる屍である。


「擬似体験って……本当に……………………楽しいょね………………」


 ミルププは最後にユズの耳元でそう囁くと、小さな体をドンと床に突き飛ばした。


「お、おい!! さすがにそれは、やり過ぎじゃないのか!?」


 グルゥはミルププが何をしたのかは分からなかったが、何をしたかったのかは分かる。

 すなわち、ユズを発狂させ、その精神を崩壊させたのだと。


 倒れたユズは失禁し、再起不能な段階にまで追いやられたのが分かった。


「やり……過ぎ……? ……おじ様は、本当に優しいんだね。コイツは、おじ様やその仲間に、同じかそれ以上酷いことをしようとしたんだょ……?」


「そ、そうかもしれないが……まだ幼い子に、こんな仕打ちをするなんて」


 ミルププの言うことも分かるし、自分が甘いことを言っているのも分かる。

 だが、アキトとは違い、無関係な人にまで手を出したわけではないユズには、まだ更生の余地があったのではないかと、グルゥはそう考えてしまうのだ。


「大丈夫……。人の痛みが分からない子供に、人の痛みを教えただけ。いつか自らを省みるときがくれば……きっと、立ち直れるから……」


 ミルププはそう言ったが、どこまで本気で言っているのか、その判断もつかない。


 ミルププの真っ赤な瞳の奥に底知れぬものを感じ、グルゥはそれ以上、言葉をかけることが出来ないのであった。

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