36.電子演算VS魔式演算 それとおっさん―1
グルゥの腹が裂け内臓が掻っ捌かれる前に、ユズの作り出したゲームの世界は無くなっていた。
無くさなければ、グルゥよりも先にユズがやられていた、というのが実際のところだが。
「あ……ありえないっ。コイツ、ぼくと同じ能力なのか……!?」
「能力? ……違う、でしょ。こんなことは、お茶の子さいさい、朝飯前、あ、そういえばお腹すいた…………晩御飯は、何にしょ……」
「くっ、ふざけてるのか、コイツっ!?」
とぼけた様子のミルププに対し、ユズはすぐにキャプチャーを始めた。
ミルププはその姿を、黙ってじーっと見つめている。
「な、なんだコイツ? ぼくの能力が分かっているわけじゃないのか? それともバカなのか――」
キャプチャーは無事に完了したが、その直後である。
「必死すぎ、乙」
まるで元の世界のスラングのような言葉に、ユズは衝撃を受けていた。
「な、なんだって……!?」
「私も、こっちの世界に持ち込まれた文献に目を通したことはあるから……少しは知ってるよ、異世界の言葉」
「あ、あ、あ……煽りやがって、許せないっ!!」
元々、どんな叩きや煽りも、自身のゲームのセンス一つで黙らせてきたユズだ。
「ぼくはゲームの天才なんだ……こんなところで、負けてたまるかよっ!!」
煽り耐性は皆無に近かったが、それも、ミルププを黙らせてしまえば良いだけのこと。
まるで召喚魔法のように、ユズのスマートフォンからは炎や雷が次々と放たれる。




