4.イモムシとおっさん―6
「しかしアイツ、本当にメスだったな」
耳元で囁かれ、まどろんでいたグルゥはハッと現実に引き戻された。
「見たんだろ? おっさんも。つるっつるのメスガキじゃねーか」
「……そういう下品な言い方はやめろ、彼女に失礼だ」
「彼女だって? ギャハハッ!! もう随分と入れ込んじまってるんじゃねーか? おっさん」
耳元の声に対し、グルゥは眉間に皺を寄せ不快感を露わにした。
「まさか“俺様達”の目的を、忘れちまったんじゃねーだろーな?」
声は聞こえても、姿は無い。
だがグルゥは、その声の主にまるで旧友のような態度で話しかけていく。
「忘れるわけ、ないだろう。……私は娘を取り戻し、あの異世界勇者に復讐を果たすのだ」
「だったら、あんなメスガキ必要ねーだろ。お前の目的を知ったら、きっと悲しむぜ。あんなに懐いてるのに、可哀想だなー、あーあ、ヒデーよおっさん」
煽るような言い方だが、グルゥはぎゅっと唇を噛み締めると、何か言いたいことを堪えたように見えた。
「相変わらず、天邪鬼なヤツだな」
「ハ?」
「それが、お前の優しさか。……心配されなくても、ほとぼりが冷めたらキットとは別れるさ。私の復讐に、彼女を巻き込んではいけない」
グルゥの決意に満ちた言葉を聞いて、声の主はそれ以上何も意見しなかった。
「まあ、わざわざおっさんから、別れるなんて言わなくてもいいんじゃねーか?」
「なんだ、その手のひら返しは。さっきまでの話は何だったんだよ」
「だってさっきから、あのメスガキ、川に沈んだまま浮かび上がってこねーし」
愕然として、グルゥは慌てて立ち上がる。
「そういうことは、早く言えっ!!」




