35.ゲームとおっさん―7
「親父、ここにいるんだろっ!!」
グルゥが気絶しかけた瞬間、何処からか聞こえてきた声で、辛うじて意識が保たれた。
目の前では、人形達がグルゥの臓物を一心不乱に食らい、見る見るうちに人間と同じサイズにまで成長し始めている。
(来ちゃ……駄目……だ……)
キット達を同じ目に遭わせたくない。
グルゥはそう願っていたが――力任せに、倉庫の扉が蹴破られた。
「いた、親父だっ!!」
「お父様っ! そんなところで、縛り付けられていたんですね!」
どうやら現実世界では、グルゥの四肢は杭に貫かれているのではなく、ただロープで縛られているだけらしい。
少しだけ、生きた心地がしてグルゥは息を吹き返す――が、顔をあげると自分の体が十八禁のグロテスク状態になってるので、見なきゃ良かったと後悔した。
「お前っ!! 前にテュルグナで、オレを捕まえたヤツだな!!」
「ああ、その時はどうも。っていうか今いいところだから、邪魔しないでくれるかな?」
「うるせぇッ!! お前なんて今すぐのしてやるッ!!」
全身に雷を纏ったキットは、すぐさまユズに殴りかかろうとしたが――
「君はもう、キャプチャー済みだったよね?」
ユズにスマートフォンを向けられた瞬間、キットの世界はグルゥと同じものに造り変えられてしまった。
「え……!? な、なんだよ、これ……お、お、親父……ッ!?」
「このゲーム、複数人同時プレイも可能なんだ。まあどの道、強化パペッタを倒す方法はもう無いんだけど」
恐慌状態に陥ったキットの胴体に、突然、目の前に現れた太っちょの人形が、大きな斧をフルスイングして命中させた。
「ッあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「ダメだよ、それは……即死攻撃なんだから、ちゃんと避けなくっちゃさ」




