34.人形とおっさん―7
「なんてこった……」
比較的治安が良かったはずの宿屋沿いの通りが、突然の爆発事故により大きな騒ぎとなっていた。
(まさか、あの人形が自爆を仕掛けてくるとは)
だが、これではっきりした。
やはり、あの人形は幻覚などではなく、確かに自分を狙って攻撃してきたのであると。
隣の部屋の三人がどうなったかが心配だった。
爆発に巻き込まれて、怪我などしていなければ良いが。
「く……いったい、誰が何の目的で仕掛けて来たんだ。はた迷惑なヤツめ」
無関係な宿まで巻き込んでしまったことを、グルゥは深く後悔する。
ひとまずは、ずっと付け狙ってきた人形は爆発に巻き込まれていなくなった。
グルゥは宿に戻ろうとしたが――
「ケケケッ、ターノシー」
それは聞き覚えのある声だった。
窓枠が吹き飛び、煙の立ち上る部屋の中から、吹き飛んだはずの人形がこちらを凝視していた。
「な……に……ッ!?」
「『悪戯好きのパペッタ』。人に悪戯を仕掛けるのが大好きだった少女パペッタは、ある日家族を驚かすためにクローゼットに隠れていると、押しかけた強盗に家族を皆殺しにされる様子を目撃されてしまう」
突然の説明にグルゥは驚いて振り返った。
するとそこには、大きな耳当てのようなものをした少女が、平べったい機械をポチポチ弄りながら立ち尽くしている。
「パペッタ自身も強盗に“悪戯”されて殺されるが、その怨念は裁縫が得意だったママに貰った人形にこもって、夜な夜な人が死ぬまで悪戯を仕掛ける殺人人形が生まれてしまった。……っていうのが、このインディーゲームの設定だよ」




