4.イモムシとおっさん―4
「おっさんじゃなくて……親父って呼びたいっ!!」
ぎゅーっと目を閉じ、勇気を振り絞ってキットは告白した。
「……………………は?」
斜め上の方向からの告白に、グルゥの目が点になり、すぐには返事が出来なかった。
頼みごとってその程度か、とか、そんなの勝手にすればいいだろ、とか。
様々な考えが頭の中に浮かんでは消えたが、一番のグルゥの思いはこれだった。
「お父さんとか、パパじゃダメなのか?」
親父は全然可愛くない……!
そんな確固たる信念が、グルゥの中にはあった。
「ヤダよ。だってそんなの、女みたいじゃん」
「いやだから、さっき自分は女だって、女らしくなりたいみたいなこと言ってたじゃないか」
「そりゃそうだろ! でも、オレは親父みたいな強い男になりたいんだ! さっきだって、結局、オレ自身は仲間のことを守れなかったし、親父みたいに、どんな敵にも怯むことのない、勇敢な男になりたい!!」
キットのトンデモ理論を聞いて、グルゥは頭が痛くなるのを感じる。
要はキットの中では、強さ=男らしさ、のように紐付けられているのだろう。
だから少年のフリをし続けていたし、逆に、心を許したからこそ自分が少女だということを明かしたのだ。
だが、キットの思いを理解出来たとして、グルゥはどうしてもその頼みを受け入れられない自分がいることに気付いた。
「もっと良い呼び方が、あると思うんだけどなぁ……」
「イヤだイヤだイヤだ! オレが呼びたいって言ったら、そうなんだ!」
「それって、もはや頼みごとでもなくないか?」
「いいじゃん親父! ダメなのか親父? あれ? 親父ってどんな意味だっけ?」
困惑するグルゥに、キットは親父呼びをゴリ押しする。




