33.乙女心とおっさん―3
「うめー!! なんかしらねーけど超うめー!!」
「…………ゎるくなぃかも…………」
二人が絶賛しているのは、屋台で売っていた“スライム飴”である。
歯ごたえのあるピンクスライムの肉を、甘めに味付けした上でとろっとなるまで煮込み、丸い飴状にして串に刺したお菓子だ。
グルゥとサリエラはそのゲテモノ風の見た目を敬遠して食べなかったが、元から何でも食べてきたキットと、好奇心が強く『暴食』の力を持つミルププは、早速味を見ようと被り付いている。
「あっ! いいなーミルププの方! スライムの目玉入ってんじゃん!」
「コリコリ……ぉぃしぃ……」
聞いているだけで食欲が失せるような内容だった。
二人の様子を少し後ろで見ていたグルゥは、気まずい空気を感じつつも、サリエラに話しかける。
「……何か、怒ってるのか?」
「え? ……私、態度に出してました?」
思いがけないサリエラの返答に、やっぱりそうなのか、とずーんと心が重くなるのを感じた。
「でも、それは別に……お父様が悪いわけじゃないんですよ」
「どういう意味だ」
「最近のお父様は、ミルププに付きっきりでしたから。少し……寂しかっただけです」
お風呂など、普段からキットの世話を任せているところもあり、サリエラ自身、色々と我慢していたのだろう。
「す、すまん」
「お父様は悪くありません。それに、『イルスフィア』では私だけがアウェーの状態ですから。ちょっとだけホームシックになったのかも……なんて、半分冗談ですけどね」




