33.乙女心とおっさん―1
ついに辿り着いた“ケントラム”。
その最大の特徴は『イルスフィア』で最大と言われるほどの町の大きさで、縦横無尽に膨れ上がった町には多種多様な店があり、それでも入りきらなかった商店は、町の東西南北の四ヶ所でバザーを開いている。
商人の間では“ケントラム”の中央部の近くで店を開くほどステータスが高いとされていて、町は常に異様な熱気に包まれていた。
全ての交易品と情報と種族が集まる町、それが“ケントラム”なのである。
そのため、三人も娘がいれば当然このような問題が発生するわけで、
「何かうまいモンでも食いにいこーぜ!」
「少しアクセサリーとか……衣服の類を見たいです」
「………………本…………」
三者三様の申し出に、グルゥは頭を抱えていた、
「お前らな。私達の目的は、ミノンを助け出すことなんだぞ」
「でも、一泊はここに泊まるんだろ? だったらちょっとくらい好きなモン見させてくれよ」
「せっかくなら、それぞれ個別で行動するのはどうですか? みんな、興味のあるものが違うようですし」
「それは駄目だ!!」
サリエラの提案を、食い気味に却下するグルゥ。
驚いたのか、サリエラの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「そ、そんなに強く言わなくたっていいじゃないですか」
「うぅ、すまん。ただ、“ケントラム”には様々な血統の魔人がいて、若い女の子が単独行動をするのには、とても危険な町なんだ」
グルゥはサリエラの目から零れそうな涙を、そっと人差し指で拭ってやろうとした。
が、サリエラはとっさに、右手でグルゥの指を乱暴に払いのけてしまう。




