###病床にて###―2
「で、でもこれは私たち三人が生きるために必要だから。ちゃんと分けないと――」
「うるせぇ!! お前らは、こんな怪我人を見捨てるってのかよ!? 鏡を見るたびに、俺はこの醜悪な顔に絶望してるんだッ!! 許せねぇ……!! 許せねぇよ、あのグルゥとかいう魔人……!!」
復讐に燃えるアキトの目には、元の世界に居た頃の真っ直ぐな輝きは、もう無い。
このまま狂ってしまったアキトをずっと看病しなければならないかと思うと、マリモの心にも、暗い影が差し込んでいくのだった。
「三等分して分ければいいでしょ。どうせ、アキトの怪我は治らないもん」
すると――それまで、ほとんど言葉を発することすらしてこなかったユズが、突然口を開いた。
ヘッドフォンをし、納屋の隅っこでずーっとスマートフォンのゲームに興じていたユズの言葉に、二人は驚きを隠し切れない。
「テメェ……治らないってのはどういう意味だよッ!?」
「だって“完全回復”を使ってもその状態ってことは、もう細胞レベルで、アキトの体はそういう風に作り変えられたってことなんだよ。恐ろしい破壊力だね、あの魔人の放つ“黒き炎”は」
「な……なんだと……ッ!?」
ユズが唐突に放った絶望的な予見に、アキトは茫然自失の体になり、それ以上何も言い返せないでいる。
「ど、どうしたのユズ。急に、そんなことを言い始めて」
「だってさ……飽きちゃったんだもん。ずっとこの納屋に閉じこもったままじゃさ、このゲームをクリアー出来ないじゃん」
スマートフォンのゲームを続けながら、ユズはそう言い切った。
このゲーム、というのは彼らが参加させられている、勇者戦争のことを指しているのだろう。
今まで何もしてこなかったユズの発言に、アキトは右半身の痛みを忘れるほどに怒り狂った。




