###病床にて###―1
「ほら、今回の活躍で取ってきたフォルだ。大事に使えよ」
名も無き村の納屋を借り、三人はそこに潜伏していた。
彼らにフォルを渡したのはゲンロクだ。
アルゴ公という後ろ盾を失った今、彼らがフォルを補給する手段は、何もないのだから。
「ごめん、本当にごめんね、ゲンロク。そっちだってフォルが必要だろうに」
「気にするな、マリモ。コイツらの面倒を見るのは、高校生組の俺たちの仕事だろ。アキトの怪我は、まだ良くならないんだろ?」
「う、うん」
「じゃあ、マリモは引き続き看病を続けていてくれ。……それにしても許せないな、アキトをそんな体にしたという、魔人は」
ゲンロクは奥で眠っているアキトをチラリと見やったが、それ以上声をかけることはしなかった。
緑色の液体が詰まったアンプルを渡すと、ゲンロクはすぐに納屋から出て行く。
彼ら五人が生き続けるのに必要なフォルを確保し続けるのは、容易には出来ないことだった。
「……行ったのか? マリモ先輩」
「うん。……ほら、液体だけど、フォルを貰ってきたから」
「さっさと俺に寄越せよ……出ないと、いつまで経ってもこの怪我が、治らないんだ」
そう言って、狸寝入りをしていたアキトは、ベッドから上半身を起こす。
グルゥの“黒き炎”に焼かれたアキトの右半身には酷い火傷の痕が残っていて、以前の姿からかけ離れた、無残な姿がそこにはあった。




