32.異世界勇者・陸とおっさん―13
「じゃあ俺達は、ここで」
困っている人々を助け、お礼として献血に協力してもらい、本当の意味での“勇者”になることを目指す。
その旅の途中であるゲンロクとミクは、行くべき場所があると言ってグルゥ達と別れていった。
馬車に戻ったグルゥは、今回の不思議な出会いについて、一人、思いを馳せる。
(異世界勇者にも、色々な人間がいるのだな)
異世界勇者と聞いて条件反射的に戦おうとしてしまった自身を恥じるグルゥ。
「あのミクってねーちゃん、相当にーちゃんのことが好きみたいだったぜ。ずっとベタ褒めしてやんの」
「二人は双子で、十七歳と言ってましたね。全然似てなかったですが」
馬車の中では、ミクの方と話していた三人が盛り上がっていた。
三人は、ミクが異世界勇者だということは知らないようである。
「……あ、そうだ、ミルププ」
ふとグルゥは思い立って、隣に座るミルププの銀髪を鷲掴みにした。
「…………ふぁ…………!?」
「お前はいい加減こうしてやる。すっ転んでばっかりじゃ、お前自身も危ないからな」
そう言って、グルゥは先程の村で貰っていた髪留めを、ミルププの髪を持ち上げて付けてやった。
ポニーテールになったミルププは、恥ずかしそうにしながらも、グルゥからの突然のプレゼントに喜びを隠し切れない。
だが――それを見て黙っていられないのは二人の方だ。
「ちょ、ちょっとお父様!! 私の分はありませんの!?」
「そうだぜ親父!! それ、オレにもやってくれよ!!」
「い、いやサリエラは躓くほど髪が長くないし、キットに至ってはそもそも結ぶ髪が無いだろ」
「じゃ、じゃあ伸ばせばいいってのか!? チクショーッ!!」
何故か悔しがるキットに対し、どうすればいいか分からないグルゥは、ただオロオロと馬車の中で困惑していた。




