表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/984

4.イモムシとおっさん―3

「うわあああああああぁぁぁ最悪だああああああああああああああぁぁぁ!!」


 発狂したキットは近くの木に向かって自ら頭を打ちつける。

 ええ……とグルゥはドン引きしていた。


「そうだよな、こんなだからオレ、女なのに盗賊のグループに回されたんだよなっ! 分かってる、もう十分分かってるからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「こ、こら! 自分で自分を傷つけるのはやめなさい。……ほら、落ちたぞ、これ」


 グルゥはキットが落とした赤のキャップを拾ってやると、その頭にそっと優しく被せてやった。

 そう言われてよくよく見ると、キットの胸は平坦で何の膨らみもない、まな板の状態だし、汚れた金髪はボサボサに伸びきっていて、女性と判断出来る要素が何一つなかった。


「だってお前、他の子からはキット兄ちゃんと呼ばれてなかったか?」


「盗賊をやるのに、自分から女だってバラすようなヤツはいないだろ。男のフリをして襲えって、そう教え込まれてたんだ」


 なるほどと、合点がいったグルゥはポンと手を打った。

 自らの性別を明かしたキットは、少し恥ずかしくなったのか、グルゥの前でもじもじと体を捩っていた。


 少し悪いことを言ってしまったと思ったグルゥは、しゃがみ込み、キットを視線を合わせた上で、その目に溜まった涙を人差し指で拭ってやる。


「……でっかいな、おっさんの手」


「それくらいしか取り柄がないからな……はは」


「なぁ、おっさん。また一つ頼みごとをしていいか」


 もちろんだ、と言ってグルゥはキットの頭をくしゃくしゃに撫でた。

 デリカシーのないこと言ってしまった分、少しでもキットが笑顔になることをしてやりたいと、素直にそう思っていた。


「そ、それじゃあ、その……」


 グルゥの手に押され、ふらふらとするキット。

 意を決したようにグルゥの大きな手を掴むと、ついに、自分の思いを伝えることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ