32.異世界勇者・陸とおっさん―2
突き刺さるような二人の視線を不思議に思いつつも、グルゥは今後のことについて話を始めた。
「それで私は、ミノンを探すために“ドラグロア”に向かおうと考えているのだが、道のりは長い。一度“ケントラム”に立ち寄り、そこから“ドラグロア”に向かう直通の長距離馬車に乗って行くのが、一番効率が良いと思うのだ」
「……ぅん、それが、ぃぃとぉもぅ……」
ぼそぼそと耳元で囁くように、小さな声で同意するミルププ。
「ちょっと! オレたちにも分かるように説明してくれよな!」
「そうです! 小声、というか囁き禁止! 私たちにも聞こえるよう、もぉーっと声を張ってくださいね!!」
何故か苛立った様子の二人に面食らいつつも、グルゥは説明を始めた。
“ケントラム”というのは七大国のどこにも属さない、『イルスフィア』の中央に位置する自由の町だということ。
自然発生的に生まれたその町は、様々な血統の魔人のみならず多くの種族が往来し、『イルスフィア』中の物資や情報が集まる重要な拠点であるということ。
「どうせ“ドラグロア”に向かうためには、対角線を描くように『イルスフィア』を突っ切らねばならんのだ。であれば、そこで情報を集めておくというのも良いだろうと思ってな。……『マモン』の国に行くのは、ミノンを助けてからでもいいか?」
そこで、あれから初めてその話題に触れられて、キットはグルゥがずっと考えていてくれたのだとを感じ、少しだけ尻尾を振ってしまった。
「も、もちろんだよ。それに、まだそこに行くべきなのか……オレ自身、踏ん切りがついていないのもあるし」
ミルププが放った忌み子という言葉が、キットの頭からはどうしても離れない。
果たして自分のルーツを探るべきなのか、キットもまだ考えあぐねているのである。
「それはそれとして……いつまで、くっついているつもりなんですか?」
グルゥにべったりのミルププを見て、サリエラはいい加減痺れを切らしたように怖い声で言った。




