4.イモムシとおっさん―1
穏やかな風、流れる川のせせらぎ。
初夏の太陽の心地よさに、グルゥは冷たい川の水に足を突っ込んだまま、ぼへーっとしていた。
このまま動くことなく天寿を全うするのではないかという、完全究極の無気力状態である。
「おーい、親父ぃ! こっちで一緒に泳ごーぜ!」
「ん……いいよ……体ならもう洗ったから……」
裸になって無邪気に川で遊ぶキットを横目で眺めながら、グルゥはそのままウトウトとまどろみ始めた。
どうせ洗濯物が乾くまで、しばらくはここに居るしかないのだ。
グルゥの意識は、盗賊を倒しキットと共に丘を歩き始めた、その時にまで遡っていく。
***
「どうして、ついて来るんだ」
自分の後ろをチョコマカと走り回るキットに、グルゥは困惑を隠せないでいた。
「ん? いーだろ、別に。オレだって、仲間はどっかに行っちゃったし、こうなった以上帰る場所なんて無いんだし。進行方向が同じだけだよ」
「同じだけって、あのなぁ……」
ボリボリと肘を掻き毟るグルゥ。
魔獣化した際に唯一綺麗だった服が破れてしまったので、一度着た服を着回しており、どうにも体全体が痒かった。
「お前、私が怖くないのか?」
「怖くないって。おっさん、本当は優しいのをオレは知ってるから。あ、そうだ。オレ、おっさんに頼みごとを聞いてくれたら何でもするって言ったよな。あれ、叶えていいか」
はぁ? とグルゥは怪訝な表情を返した。
こっちは何も頼んでいないのに、一方的に叶えるとはどういうことかと。
キットは、おもむろに着ていたシャツのボタンを外し、胸元をはだけさせる。




