30.引きこもりとおっさん―7
それから約十分後。
「誰が得するんだ……! こんなの……!!」
足腰が立たなくなくらいまで笑い転げたグルゥは、ようやく触手から解放され、床の上に大の字に寝転がっていた。
その体は、触手が放った粘液まみれでべちょべちょである。
後ろでガッツポーズをする“得した誰か”が存在していたが、グルゥはそれには気が付かなかった。
「つっても、オレだって毎回こんな思いをしてるんだからな」
「ご、ごめんなさい」
普段もふられている側のキットに主張されて、謝らざるを得ないグルゥ。
ちなみに根性で一線は守ったと、誰も気にしていないどうでもいい主張をしていた。
ミルププはそんなグルゥに、何かを伝えようとぼそぼそと喋っていた。
「…………ぁ…………ぃ……」
「ああ!? 何を言ってるんだ!? ミルププ!!」
が、まったく聞き取れないので、普段のグルゥには似つかわしくない大きな声で、ミルププを怒鳴りつける。
ミルププはとても驚いて、その目には見る見るうちに涙が溜まっていった。
そして、隠れるようにキットの後ろに移動してしまう。
「お、おいおい親父。それはちょっと言い過ぎじゃないか? こんな子供相手に」
「子供? ……お前らには、コイツが子供に見えるのか!?」
グルゥに聞かれ、キットとサリエラは同時に顔を見合わせた。




