30.引きこもりとおっさん―4
だが、肝心のミルププはというと。
「ぷ……うぷぷぷ……」
不気味な笑い声が響く。
サリエラが先程見つけたもの――それは崩れた本の山の下から生えている、白い二本の足だった。
足は不規則に痙攣を繰り返していて、どう見ても普通の様子ではない。
それでサリエラは、慌ててミルププ(?)と思われるものを助けに行こうと駆け出してしまったのだ。
「わっはっはっはっは!! 早く、早くミルププにこれを止めさせてくれぇぇぇ!! でないと、色々な意味でまずい!!」
それはそれで見てみたいとサリエラは思っていたが、それとは別に、すぐには中に入り込めない理由があった。
何せ、床中に広がった本の海である。
(どこにトラップが仕掛けられているか分からないですっ!!)
先程の一連のカラクリからして、侵入者を撃退する仕組みが隠されているのは明白である。
本の間から突き出た足だって、人を誘い込むためのミルププの策略なのかもしれない。
「あぁぁぁぁぁん!! らめぇぇぇ!! そこだけはぁぁぁぁぁ!!」
そうこうしている間に、グルゥの悲鳴もおかしな方向へ進み始めていた。
早く助けなければ、と思いつつも、サリエラはついつい顔を真っ赤にしているグルゥを見てしまう。
「助ける気あるのか!?」
「い、いえ、あまりにも良い眺めだったもので……つい……」
もはや本音がダダ漏れのサリエラは、垂れた涎をじゅるりと啜るのだった。




