30.引きこもりとおっさん―3
それは本の下に隠された、仕掛けを作動するためのスイッチだった。
「危ないっ、サリエラ!!」
とっさにサリエラを突き飛ばすグルゥ。
すると横にあった本棚の一部が盛り上がり、突き出してきた角材にグルゥは思い切り吹っ飛ばされた。
「うおおおお!?」
グルゥはその勢いのまま、壁を背にした本棚にぶち当たる。
本棚の上に置いてあったビンが倒れ、グルゥは頭の上から真っ白な粉を被ることになった。
「ごほっ、ごほっ!? なんだこの粉は、甘ったるい、目が見えない……!!」
その直後である。
まるでその粉に反応するかのように、本棚の本の隙間から、黒くてうねうねとしたものが飛び出してきた。
そしてそれはあっという間にグルゥを絡めとり、グルゥは本棚に磔にされてしまう。
「ぐおおおおお!? な、何なのだこれは!?」
「た、大変です!! お父様に……触手が……!!」
そう、グルゥに絡みついたものはどう見ても触手であり、白い粉を舐め取ろうと、グルゥの体を一生懸命にまさぐっている。
グルゥは触手を引き剥がそうとしたが、いくら力を込めて振り払っても触手がびよーんと伸びるだけで、すぐに元通りに磔にされてしまった。
「お、おい! 誰かミルププを呼んで……わ、わはは、呼んでくれ、でないと、こ、これは、わはははは!! くすぐったいぞ!!」
触手はグルゥの服の中まで滑り込み、ねばねばの粘液を噴出しながら、グルゥの体をこちょばしていく。
グルゥは既に体に力を入れることが出来ず、ひたすらに大爆笑してされるがままになっていた。




