###暗室にて###―2
「あ、あ、あ、あんた、なにコレ――」
「いやぁ、ほらさ。こういうのって“なろう”でよくあるジャン? チートを使ってハーレム生成ってヤツ」
ニッと楽しげに笑う少年。
そこには一ミリも悪びれる様子はなかった。
起き上がった少年は、ハローと声を掛けながら、裸の少女達の頭を順番に撫でて回る。
「チートスペル“魅惑香”。部屋の中がくっせーのが玉に瑕だけどな」
「サ、サイテー。そんなことして、酷いと思わないわけ?」
少年の行いに、少女は女性の一人として怒っていた。
「酷い? どうしてだよ、だってこの世界は俺達の世界じゃないんだぜ? ってことは、何をやったって自由ってことだろ。こんなヤツら、俺達にとってはモノでしかないんだ」
「……それが勇者の言うセリフ?」
「言うだけの仕事はちゃんとこなしてるさ。『イルスフィア』からの人柱の調達も、順調に進めてるからな」
「……勝手にしろっ!」
話にならないと、少女は肩を怒らせながら部屋から出て行こうとした。
その背中に、少年は軽薄な口調で語りかける。
「それに勘違いしないでくれよな。俺ってこう見えてピュアだからさ、コイツらはただのフィギュア代わり。やましいことはしちゃいないよ」
その言葉に、少女は言い返す気力も失ったようだった。
「そういうことは、初恋の人とヤるって決めてるからな、俺。偉いだろ? 勇者のことは嫌いになっても、俺のことは嫌いにならないでね」
少女の答えは、バタンッと目一杯の力で閉められた扉が答えていた。
それを見て、少年は満足げにベッドの上に寝転がる。
「あー、異世界転生って最高ッ!! チート様々だな、こりゃ」
独りでに閉まるカーテン。
室内は、再び闇に包まれようとしていた。




