EX4.おっぱいとおっさん―3
「ですが、その……ムジカ様はお亡くなりになりました」
「そんなこと、わざわざ言われなくても分かっているさ」
「グルゥ様は以前、私には妻がいるから駄目だ、と仰っていたじゃないですか! それなら、今はどうかと思って……」
涙目になって、ニフラはしゅんと肩を落とす。
(だからといって、キットとサリエラのママになって既成事実を作るのはどうなんだ)
その発想の飛躍っぷりに、グルゥはげんなりとしていた。
「まだ……私には振り向いてくれないのしょうか」
「今はまだ……そんな気分にはなれないし、恐らくはこれからも、私の生涯の伴侶はムジカただ一人だけだ。好意を寄せてくれるのは、嬉しいのだが」
「二番目でも、いいんですっ!」
そう言って、ニフラはグルゥの手を取る。
熱っぽい目で見つめられ、グルゥは戸惑いを見せたが、ぽよんぽよん、と。
「なんか、当たってるぞ」
「当ててるんですよ、グルゥさんのために。もっとガッツリいっちゃいます?」
てへぺろ、と舌を出すニフラ。
グルゥの拳骨が、ニフラの脳天にお見舞いされた。
「お、恐るべしおっぱい……あれが大人の業なのですね」
素直に感嘆するサリエラに対し、キットは自分の胸を見やって絶望的な顔をしている。
馬鹿者、という怒鳴り声が深夜の城内に響いていた。
「私は寝るからな! 二度とはしたない真似をするな!」
「う、うぅぅ、グルゥ様……」
グルゥに置いてけぼりにされ、ニフラはその場にへたり込んでハンカチで目元を拭う。
「そういうところが……お素敵です……!」
「単純にやべーヤツだな、アイツ」
まったく懲りていない様子のニフラを見て、キットもまた別の意味で感嘆するのだった。




