EX4.おっぱいとおっさん―1
その晩、ヌエツト城の一室を与えられたグルゥは、久々に一人で、大きく体を伸ばせるベッドに寝ていた。
だが深夜、通常であれば誰もが眠りに落ちているような時間に、その部屋の扉が静かに開け放たれる。
(また、か)
色々と刺激的なこともあったため、そろそろ来るのではないかと思っていたが。
こっそりと扉の方に目をやったグルゥは――驚愕した。
「サ、サリエラ!? どうしたんだ、その顔は!?」
現れたサリエラはいつもの上記した顔でなく、半べそをかきながらグルゥに抱きついてくる。
「お、お父様ぁ……!」
「どうした、怖い夢でも見たのか?」
「い、いえ、ある意味、その方が何倍もマシなのですが……おっぱいが、おっぱいがぁぁ」
うわ言のように“その単語”を繰り返すサリエラに、グルゥは心の底からのクエスチョンマークを浮かべる。
「すまん、その……何が、どういう?」
困惑しているところに、さらに大泣きをしたキットが部屋に駆け込んでくる。
「うわああああああああああああん親父ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「キット!? お前までいったい、どうしたんだ!?」
「おっぱいがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁおっぱいがいっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
二人ともかなりの恐慌状態で、まともに話せる状態にないらしい。
だがグルゥは――次に部屋に入ってきた者の姿を見て、二人の言う“その単語”が、ある特定の人物を指していたのだと気が付いた。




