29.主君とおっさん―9
「だ、誰か助けて! 親父! 親父はどこ!? ヘルプ!!」
「グルゥ様なら……先程、お手洗いへリバースに行きましたよ」
相変わらずの酒の弱さだった。
そしてその報告をしたニフラも、怪しい目でキットの耳と尻尾を見つめている。
「本当に可愛らしい子だと……私も思っておりました」
「ぐふふ。だろう。どうだ、お前もひともふくらい」
「王の許可を頂けるということであれば、是非とも……」
「お前ら、オレで遊ぶなっ!!」
その怒りも虚しく、二人がかりで押さえつけられ、もふられるキット。
何をやっているんだかと、サリエラはその様子を呆れながら眺めていた。
「う、うう……飲み過ぎた……」
「あっ! 親父! いいところに来た! 早くコイツら止めてくれ!!」
「お父上、ニフラ……!! 二人だけで、何勝手に楽しいことをしているのですか!!」
すっかり出来上がっていたグルゥは、二人を止めることなく自分ももふもふに参加する。
「もふもふもふもふもふ」
「もふもふもふもふもふ」
「もふもふもふもふもふ」
「お、お前ら……いい加減に……しろーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
その日キットが放った電撃は、“血統の覚醒”を疑われるほどに強烈な一撃だったという。




