28.里帰りとおっさん―10
「や、やめてください、そこはっ……!? 子供たちが見ているんですっ」
「黙れぃ。儂の配下になるというのは、こういうことなのだ」
デルガドスはグルゥの折れた黒角の根元を握ると、そのまま力任せに、グルゥの頭を床に押し付ける。
グルゥは抵抗することもなく、顔を真っ赤にして、ぎゅっと目を閉じ羞恥に耐える顔をしていた。
「か、勘弁してください、お父上……っ!!」
そして、そのまま――三分近くが過ぎる。
「いや、何もないんかいッ!!」
サリエラの渾身のツッコミが炸裂した。
サリエラが何を期待していたかは不明だが、そこにニフラの解説が入る。
「『サタン』の血統の男にとって、角を掴んで相手を倒すというのは、自分の立場の方が上だと相手に思い知らせる意味があるのです。逆に、ああやって掴まれたまま抵抗しないというのは、服従の意を表しているということですね」
「マウントってやつだろ? それならオレにだって分かるぜ」
「キットは頭の中身が犬だからです……。そ、それにしても思わせぶりですね。子供には見せられないとか言ってるから、もっとえっちな何かを期待してしまいました」
そう言って鼻血を啜るサリエラ。
何言ってんだコイツと、キットはサリエラにドン引きした目を向ける。
「あら、あなたにはまだこの良さが分かりませんの? もう少し人生経験を積めば、あなたもこの光景の尊さが分かるようになりますよ」
ニフラにも、同じようにドン引きするキット。
「お、親父ーっ! なんかコイツら、怖いーっ!!」
キットが泣き付いたところで、デルガドスはようやくグルゥを苛める手を離したのだった。




