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28.里帰りとおっさん―9

 キット達がおっぱいに気を取られている間に、グルゥとデルガドス、二人の戦いは最終局面へと入っていた。


「多少は逞しくなったみたいじゃないか、ひよっ子めがッ!!」


「いつまでも子供扱いしないでくださいッ!! ……もう私も、四十五歳ですから!!」


 同時に頭突きを繰り出したグルゥとデルガドス。

 見ているだけで火花が散りそうな激突が起こって、二人はそのまま、頭で力比べを始める。


「旧友との再会の際に、お互いの角の合わせて力比べをする。これが『サタン』の男の習性なのです。もっとも、グルゥ様の角は折れてしまったため、現在はおでこをくっつけるような形になっておりますが」


「いや、そんな動物を生態を紹介するみたいに言われても……。……まあでも、大型犬が二匹じゃれ合っているようにも見えてきた……」


 ニフラの解説を聞きながら、キットはだんだんとげっそりした表情になってくる。

 毎回、こんな胸焼けのするような殴り合いを見せられていると考えると、家臣らが暗い表情をしていたのにも十分納得が出来た。


「ほざけッ!! 貴様など、儂からすればまだまだ青二才だわッ!!」


 二人の勝負の決着は――デルガドスに軍配が上がったようだった。


 押し倒され、大の字なったところを馬乗りにされるグルゥ。

 大きく息をする度に、デルガドスの巨体が上下していた。


「老いては益々さかんなるべし、というところですか、お父上。……私の負けです」


「負け? ぐふふ、そう簡単に、儂が貴様の負けを認めると思うか?」


 デルガドスは不敵な笑みを浮かべると、次の瞬間――


「う、うーん……おっぱいがいっぱい……?」


 綺麗な鼻血のアーチを描いて倒れていたサリエラは、朦朧とした意識の中起き上がると、それを目撃する。


「ホギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

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