28.里帰りとおっさん―8
「この愚息めッ!! その程度の拳では何も思い出さんぞッ!!」
「お父上こそ、動きにキレが無くなってきたのでありませんかッ!! 昔のあなたであれば、今の一撃で私の頭は吹き飛んでいたはずですよッ!!」
そう言って、泥沼の殴り合いを始めるデルガドスとグルゥ。
顔面だけでなく、ボディや、ローキック、何でもありの肉弾戦である。
「え、えーっと……何が始まったんだ? コレ?」
「というか、お父上というのは……? まさかデルガドス王はお父様のお父様……つまり私のお爺様!?」
すっかり混乱する二人だったが、その肩が後ろからポンポンと叩かれた。
「領土を与えられた家臣は、“ヌエツト”の名を与えられ、王と義理の親子関係を結ぶのです。これは王の身にもしものことがあった時、速やかに次の王を選ぶための仕来りなのですわ。ヌエツトの王は、王家の中でもっとも腕っ節が強い者、と決まっておりますから」
肩を叩いた者の説明を聞いて、なるほど、と感心しながら二人は同時に振り向く。
すると――
「ホギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
「おっぱい!? おっぱいが喋ってる!? なんで!?」
二人の目の前では、たわわに実った二つの膨らみが、ドガデーン!! とその存在を主張するように大きく揺れていた。
「あら……『サタン』の血統の女にとって、このくらいのサイズは普通なのですよ?」
そう言った大柄な女性には、グルゥと同じような黒角が生えていた。
丸い眼鏡と、少し舌足らずな敬語が印象的な、二十代後半の女性だった。
「あ、申し遅れました。私はニフラと言いまして、デルガドス王の侍女を務めている者です。せっかくですし、少し、堪能してみます?」
ニフラは二つの膨らみで、サリエラの顔を左右から挟みこんでみせる。
一瞬で鼻血を噴出したサリエラは、そのまま後ろに倒れて、グルゥ達の勝敗が決まるよりも早くノックダウンしてしまった。
「淫……獣……っ!?」
もちろん、そんな言葉の意味は分からないキットは、ポカンとして倒れたサリエラを眺めていた。




