28.里帰りとおっさん―7
家臣達はさっと後退して、デルガドスから距離を取っていく。
「ま、まさかこれって……」
「考え得る限り、最悪のパターンかもしれないですね……」
キットとサリエラも、その波にとってそーっとグルゥから距離を離していった。
デルガドスは歩く度に地響きを起こしながら、ついにグルゥの前に立つと、その拳を大きく振り上げる。
「言って分からぬようなら……その体に叩き込んでやるわッ!!」
岩のような拳が、グルゥの右頬に炸裂した。
吹き飛ばされそうになったところを、グルゥは踏ん張ってギリギリ持ち堪える。
「親父っ!?」
「お父様っ!?」
とっさに駆け寄ろうとした二人に対し、グルゥは手を横に構えて制した。
口の中を切ったのか、グルゥはペッと血の混じった唾を吐く。
「こっちこそ……直接、その体に思い出させてやりますよっ!!」
お返しとなる、グルゥの渾身の右ストレートがデルガドスの顔面に突き刺さった。
「「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
キットとサリエラの悲鳴が綺麗にハモる。
いくら自国の王だからって手を出していいのか?
このまま一緒に処刑されるんじゃないのか?
そんな不安を抱く二人だったが、一斉にため息をついた臣下達を見るに、それは杞憂だったらしい。
「また始まりましたね」
「汗と血と、後で綺麗に掃除しなきゃならないこっちの身にもなって欲しいです」
大きく身を仰け反らせ、グルゥのパンチを持ち堪えるデルガドス。
上半身を戻すと、鼻血が白髭を汚していたが、その口元は楽しそうに笑っていた。




