28.里帰りとおっさん―4
「なぁなぁ、ミルププは死んだんじゃなかったのか?」
『イルスフィア』の広大な大地を、グルゥの故郷目指して歩く道すがら。
何も無い景色に飽きてしまったキットは、グルゥとの話に花を咲かせていた。
ちなみに、サリエラはすっかり歩き疲れて、グルゥの背中におぶわれた状態ですやすやと寝息を立てている。
体力の限界を超え、発情する力も残ってなかったようである。
グルゥは自分の体力が続く限りは、サリエラとキットを交互におんぶして、出来る限り休ませて進むつもりだった。
もっとも、グルゥたちが転送された場所は『イルスフィア』での“ラグランジュ・ポイント”であり、グルゥの故郷からそう遠くない場所であるはずだったが。
「キットが出会ったミルププは、あくまで本体の“使い魔”だったんだ。イモムシを操って、実際に喋ったり考えたりしているのは、『イルスフィア』に居るミルププだったんだよ」
「へー……よく分からないけど、ミルププはまだ生きてたんだな! それなら安心だ!」
キットの尻尾が嬉しそうに左右に振られている。
グルゥはもふもふしたい衝動に駆られつつも、サリエラを背負っている以上我慢することに決めた。
「じゃあもしかして、オレたちはミルププ本人に会えるのか!?」
「ん? ま、まあ……それは、その場の流れというか、その機会があったらな、って話だ」
妙に歯切れの悪いグルゥに対し、キットは怪訝そうな表情を浮かべる。
「な、なんだよ。オレとミルププを会わせたくないのかよ」
「いや、そういうわけではなくて……向こうがそれを望んでいるのかどうか」
「会ってみたいに決まってるだろ! だってオレたち、友達になったんだぜ!」
元気よく言い切ってみせるキット。
果たして、久々に会う“問題児”がどのように成長しているのか……グルゥはたまらなく心配だったが、キットにはそのことは言わないでおくことにした。




